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猫のフィラリア症（犬糸状虫症）は、犬のフィラリア症と同種の寄生虫が、カの媒介によって感染する。猫ではまれな疾患で、寄生虫体数も少ないため、感染猫の症状は一定しておらず、無症状のものから、一時的に咳、嘔吐、食欲不振などを示す例、さらに突然重篤な症状が現れたり、突然死亡する例まである。寄生虫体数が少ないために確定診断がむずかしく、また診断されても治療が困難である。予防は可能であるため、犬でのフィラリア症の発生が多い地域では予防対策を考える必要がある。

カの吸血時に、線虫の一種である犬糸状虫（犬と同じ）の感染子虫が猫の体内に侵入することによって感染が成立する。感染子虫は体内で成長し未成熟虫となり、その後最終寄生場所である肺動脈内に移行してそこで成熟する。しかしながら、猫では侵入した感染子虫が成熟虫（成虫）にまで成長する率はきわめて低い、また、猫1頭に寄生する成虫数も少なく、通常1～2匹である。寄生率は、地域により差はあるものの犬が50％以上であるのに対し、猫では2～3％である。犬で発生の多い地域では猫でも発生が多い傾向にある。

猫では犬に比較して未成熟虫や成虫（とくに死滅虫体）に対する宿主の組織反応が強く現れるため、少数寄生にもかかわらず激烈な症状をおこしたり致死的経過をとることが多い。わずか1匹の虫が寿命で死んだ場合でも障害をおこし、死亡することさえある。

多くは無症状であり、症状があっても本症に特有なものは少ない。よくみられる症状は、慢性・間欠的な咳や呼吸困難（気管支喘息に似ている）。食餌などとは関係のない嘔吐である。単に食欲不振や嗜眠傾向を示すだけの場合もある。突然、虚脱状態になったり、循環不全を示すなどの犬の急性症（大静脈症候群）に似た症状を示すこともある。